2026/05/14 19:05
その店には、“心を映すカチューシャ”が並んでいると言われています。
ある冬の日、内気な少女は学校の帰り道、霧の中でその館を見つけました。
扉を開けると、鈴の音が静かに響きます。
「いらっしゃいませ」
現れたのは、白い手袋をした不思議な店主でした。
顔は影に隠れて見えません。
少女は小さな声で言いました。
「自分に自信が持てるようになりたいんです…」
すると店主は、黒とアイボリーのリボンが重なったカチューシャを差し出しました。
月明かりのように淡いリボンと、夜のように深い黒。
「これは、“勇気と本音”を結ぶリボンです」
少女がそっと身につけた瞬間――
鏡の中に映った自分が、まっすぐ前を向いていました。
いつも俯いていたはずなのに。
怖くて飲み込んでいた言葉が、胸の奥から溢れてきます。
翌日、少女はクラスのみんなの前で初めて自分の夢を話しました。
「将来、デザインの仕事がしたいの」
教室は静まり返りました。
けれど次の瞬間――
「すごい!」
「あなたらしくて素敵!」
温かな声が次々に返ってきたのです。
放課後、少女は急いで“リボンの宝箱”へ向かいました。
お礼を伝えたかったから。
ですが、そこにあったのは古い空き地だけでした。
風が吹き、髪のリボンがふわりと揺れます。
すると耳元で、小さな声が聞こえました。
「本当の魔法は、あなたが自分を信じた瞬間に始まるのです」
少女

は微笑みながら、カチューシャに触れました。
その黒いリボンは、もう怖がっていた昨日の自分とは違う――
新しい自分への、小さな約束になっていたのです。

